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2008年7月 2日 (水)

石川啄木賞入選作

現在発売中の『詩歌句』に石川啄木賞の入選作が掲載されています。

わたしは佳作でした。

掲載誌に一部誤植がありましたので、わたしの真作をここにアップします。

(作品の誤植なんて信じられないです。でも仕方ない。いや、仕方ないのですか?)

ゆずいろの指               須藤歩実

春の陽をまちきれなくてまだ奥の湿ったシューズに素足を入れる

真夜中の雨にわたしのキャンディーが舐められていて薄荷のにおい

白いシーツに眠るわたしは暗闇のように誰かを眠らせている

吾として座る少女は給食のミートソースに名前を探す

父親に嘘をつくたび苦くなる体操帽子のゴム紐ぬれて

頬骨は母のつくった窓ならばときどきとんと音がきこえる

おかあさんさわらないでと目を瞑り言えばおかあさん果てしなき

悪いのはわたしでしょうか上靴の裏に刺さった画鋲がひかる

あなたより一日長い夏休み 黒い日傘を空に拡げて

ブラウスにたくさんついた仄白いボタンがひとつひとつかなしい

柚子色の指を見たくて恋人の手袋くっと囓って外す

みたされて眠るあなたの首すじに触れようとする影の鋭さ

垂れこめた雲に溺れる冬木立ほしいほしいあなたがほしい

つぶやいた名前は風にさらわれて私から去る君を追い越す

交わされた言葉は消える引き出しの裏から落ちるノートのように

レントゲン写真にうつる白い雲かなし雨雲かなしfemale

この広い野原を逆さにうつすためラムネの瓶を割ってしまった

スプーンの束にうつったわたくしの顔わたくしの唇 無数に

君の子を産むことのない吾の手を紫陽花にする大粒の雨

すれ違う影がバーコードになってこの街も売られてゆくのです

マリオネット事切れて右足と右手を出した横断歩道

点滅の赤信号が息苦しい からすうりってどこにあるのよ

空蝉のもうあわないと決めたからシンクに切り落としてゆく前髪

海岸に砕けてしまった子ども達シルル紀に貝だったわたしの

鬱病に病巣はない瑠璃色の羽を広げてメールは堕ちる

草原に脱ぎ捨てられた長靴を母と呼ぶには心細くて

夕空の木々に生息する蜘蛛を星と呼ぶにはまだ早すぎて

蝉の翅一枚分の影を踏む私一人を助けるために

手のひらにぽんかん一顆およがせてはつものと発音する病室

そのままのわたしでいいという人と花の終わった球根を抜く

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